【2017年一部更新】
日本では近年「決済」分野で競争が激化していますが、個人的に元銀行員なこともあり、注目しているのがソーシャルレンディングなどの「オンライン融資」の分野です。
今回はソーシャルレンディングの概要、ソーシャルレンディングをやるに当たって踏まえておきたいリスク、そして今後の可能性などを記載しておきます。
- ソーシャルレンディングなどのオンライン融資とは?
- オンライン融資・ソーシャルレンディング市場の可能性
- 金融商品としてのソーシャルレンディングの可能性
- ソーシャルレンディングの主なリスクとメリット
- 日本の金融ベンチャーは欧米のタイムマシンとなるのか?
- 今後はソーシャルでデジタルな与信判断サービスが主流に?
ソーシャルレンディングなどのオンライン融資とは?
まずオンライン融資とは、簡単に言うと『ネット上でお金を借りたい人、企業』と、『ネット上でお金を貸したい人、企業』を結びつける融資仲介サービスのことを指します。
アクセンチュアのレポートによると、2014年第1Quaterは、FinTech向け投資の内37%をオンライン融資分野が占めています。
ちなみに決済領域は10%程度ですので、かなりの割合を占めています。また、今後間違いなく日本でもこのオンライン融資市場は伸びるでしょう。
実際、2008年に日本初のソーシャルレンディング事業者であるmaneoが生まれた後は、2013年から伊藤忠商事が出資しており、海外の新興国に資金を提供するクラウドクレジットなど、オンライン融資の分野に属する金融ベンチャーも日本でも少しずつ増えてきました。
オンライン融資・ソーシャルレンディング市場の可能性
あお、オンライン融資にも種類があるのですが、僕が非常に関心があるのが、「ソーシャルレンディング(Socila Lending)」や「融資型クラウドファンディング(Crowdfunding)」と呼ばるジャンルです。
ちなみに「クラウドファンディング」とは、インターネットを通じて不特定多数の人から資金を集める仕組みを指します。
こちらの記事 は少し古いのですが、近年世界中で「クラウドファンディング」での資金調達額は増加しています。
中でも「融資型」と呼ばれるジャンルは全体の約40%を占め、今後10年で100兆円規模になるとの予想も出ています。
クラウドファンディングの種類4つ
- 融資型:投資側は対価として分配金などを受け取る
- 寄付型:投資側は完全に寄付する
- 購入型:投資側は対価として商品やサービスを受け取る
- 株式型:投資側は対価として株式を受け取る
日本でも近年「融資型のクラウドファンディング」は急成長を遂げており、2015年3月末時点での貸出総額は310億円と前年比2倍となったことで、日経新聞にも取り上げられました。
また、矢野経済研究所のレポートなどを見ると市場規模は確実に拡大しています。
次に、オンラインで資金を調達する側ではなく、オンラインで資金を出資する側(要はお金を貸す側)のニーズについても考察してみました。
金融商品としてのソーシャルレンディングの可能性
僕がオンライン融資に可能性を感じているのは、投資側にもメリットがあるからです。
融資型クラウドファンディング(以下ソーシャルレンディングと言います)は、大きなリスクを取らずに5%~10%もの高い金利が得られる「ローリスク・ミドルリターンの金融商品」だと思っています。
現状、僕が知りうる限りでは、この「ローリスク・ミドルリターンの金融商品」は日本にはあまり存在しません。
強いて言うなら利回りの良い社債やリスクの低い投資信託などでしょう。
そのため、新しい金融商品である「ソーシャルレンディング」は、大きなリスクを取りたくない貯蓄重視型の日本人の特性にあった金融商品であり、30代~40代の中上流階級層を中心に、徐々に人気が出る事が想定されます。
日本の金融業界は以前から「貯蓄から投資へ」をスローガンにNISAの導入などを試み、世界最大の日本の現預金870兆円を投資に向けるべく、各種手を尽くしています。
しかし、結局リスクがある金融商品へは一定数の人しか手を出さないのです。
その一方で、定期預金や保険などの低金利には不満あり、何か良いお金もうけを探している人が世の中には多く、副業ビジネスなども流行っています。
ただ、お金もうけはしたいものの、難しい金融用語や経済を勉強するのは、正直めんどくさい…というのが人の心情です。
そのため、一度購入した後は商品の事は忘れて、ほっておけるような商品に投資したいなんて思う人が出てきます。
そんな金融商品が「ソーシャルレンディング」です。一度購入した後は放っておいて、数か月から数年後に利回り5%~10%でのリターンを得ることができます。
ソーシャルレンディングの主なリスクとメリット
そうは言ってもソーシャルレンディングに全くリスクがない訳ではありませんので、そちらについてもメリットと合わせてご説明します。
まず、主なリスクは下記になります。
ソーシャルレンディングのリスクは?
- 貸出先のデフォルトリスク(統計上1%以下)
- 当初の期待利回りを下回るリスク
- 為替リスク(海外向け貸出の場合)
- 流動性リスク(中途解約不可)
主なリスクは「貸出先のデフォルト(倒産)リスク」です。
ですが、このリスクに関しては、もちろんソーシャルレンディング事業者が審査した上でお金を貸しますので、限りなく低くなります。
実際、クラウドクレジットやmaneoなどの日本の大手ソーシャルレンディング事業者の貸出先の倒産確率は1%を切っています。
一方、主なメリットには何があるかというと、以下になります。
ソーシャルレンディングのメリットは?
- 高利率(5~10数%)(メガバンクの定期預金は0.025%です)
- 分散投資が可能(1社だけでなく、複数社への投資が可能)
- 少額から投資可能(1万円から投資が可能)
- 市場動向に左右されない(株や投信のように景気に左右されない)
- 一旦決めれば放っておいて良い(株や投信のように定期的に見る必要が無い)
- 毎月一定の収入が得られる(元利均等返済であれば毎月リターンを得られる)
まとめると大体こんな感じです。
なお、購入者(=出資者)が5%〜10数%以上ものミドルリターンを得ることができるのは、ソーシャルレンディング事業者が高金利で貸出先にお金を貸しているからです。
日本の金融ベンチャーは欧米のタイムマシンとなるのか?
少し海外に目を向けると、オンライン融資の分野は、2005年に英国で「Zopa」という企業がサービスを開始したのが始まりです。
その後、2007年には米国で「Lending club」が創業し、2014年に時価総額1兆円でNY証券取引所に上場しています。
日本では「maneo」が2008年に創業したものの、正直いまだに知名度は高くありませんが、今後はもしかしたら上場するようなソーシャルレンディング事業者も生まれてくるのかもしれません。
ソーシャルレンディング老舗の「maneo」
maneo(マネオ)は古くからあるソーシャルレンディング事業者ですが、評価できるのは自社の業績をきちんとHP上に公開している点です。
そしてこれまでの推移を見る限り、業績は堅調に推移していますので、信頼性の高いソーシャルレンディング事業者の一つのように思います。
また、SMBCベンチャーキャピタルやGMO、VOYAGE GROUPといった大手が出資している点からも、今後上場の可能性もあると言えるでしょう。
伊藤忠商事が出資する「クラウドクレジット」
そして、個人的に注目しているのは、「伊藤忠商事」や「マネックスベンチャーズ」もが出資しているクラウドクレジットです。
クラウドクレジットは、代表の杉山氏が金融畑出身(東大→大和証券SMBC→ロイズ銀行)ですし、執行役員などの経営メンバーにも、続々と元金融機関出身の金融のプロ達が集まって来ています。
成立ローン総額や会員数も順調に増えており、今後が期待できるベンチャー企業です。
また、ペルーなどの新興国向けへの投資ができることからも、利回りが10%以上の高い投資ができる点や、社会貢献性が高い点なども魅力的と言えるでしょう。
果たして日本の金融ベンチャーから、欧米のようにソーシャルレンディング事業者でIPOが生まれるのかなど、このソーシャルレンディング市場には注視していきたいと思います。
今後はソーシャルでデジタルな与信判断サービスが主流に?
最後に、オンライン融資に関連して「Vouch」という企業をご紹介します。
「Vouch」のCEOは元PayPal出身で、こちらの企業には金融系のスタートアップやGoogleなどの人材輩出企業から優秀な人材が集まっており、非常に注目を集めているスタートアップの一つです。
こちらの企業の特徴は、「SNS」を用いた与信判断が行われていることです。「与信判断」とは、お金を貸せるかどうかを判断することです。
ちなみに、通常銀行が個人に融資をする場合、その人の収入(給料など)や資産背景(貯金や不動産など)などを基に総合的に判断します。
周囲からの信頼度で融資の金利が決まる時代は来るのか?
こちらのサービスで面白いのは、「自分が周囲からどれだけ信頼されているか?」によって金利が変わる点です。
まず、お金を借りたいユーザーは登録後、友人や家族をこのサービスに招待します。
招待した人がweb上で簡単なアンケートに回答し、その回答率や回答までの期間、さらに借主が返済できなかった場合にどれくらいの金額まで保証できるか?といった回答を踏まえ、最終的な金利が決定される仕組みです。
つまり、周囲の多くの人に信頼されているユーザー程、金利が安くなるのです。これはもはや収入力ではなく、総合的な人間力なるものが試されているように感じますね。
実はこのSNSを用いた与信判断ですが、海外では結構実験的に導入されているようです。
更には、「人の人生はある程度パターン化できるので、大体歩んできた人生でその人の与信額が決まってしまう」という意見を持っている人もいたりします。
確かに、膨大なデータを解析することにより、人の人生すらもパターン化できてしまう時代は近いのかもしれません。
今後は今まで銀行が与信判断に用いていたデータだけではなく、このように新しく取得できるようになったデータを用いた与信判断が、ソーシャルレンディングサービスにも活用されていくのではないでしょうか。