金融とテクノロジー雑記

勉強になった本の感想など

ハワード・マークス「投資で一番大切な20の教え」の本の感想と学び

投資

今更ながらバフェットもお勧めする「ハワード・マークス」の「投資で一番大切な20の教え―賢い投資家になるための隠れた常識」を読んだので読書メモでも書こうかなと思います。

Wikipedia先生によると、ハワード・マークスはペンシルベニア大学ウォートン・スクールで金融を学び、シカゴ大学でMBAを取得。シティバンクにて役員を務め、TCWグループに加わり、その後オークツリー・キャピタル・マネジメントを創業。

2015年には、『フォーブス』誌のアメリカ人長者番付で338位となる総資産19.5億ドルと報じられたそうです。

投資の原則は、「安く買って、高く売れ」

投資で確実に成功するには、まず最初に本質的価値を正確に推計することが不可欠だ。

さもなければ、投資家として成功しつづけるという夢は、夢のままで終わってしまう。

この一文は株式投資をイメージした文のように思いますが、古くからの格言にもあるように、投資で成功し続けるためには「本質的価値を下回る価格で買い、上回る価格で売れ」ということのようです。

本書を読んで、ハワード・マークスも、古くはベンジャミン・グレアムから始まった「バリュー投資」の思想に影響を受けているのだろうなと思ったのですが、個人的にもウォーレン・バフェットなどが実践する「バリュー投資」という考え方が好きではあります。

感覚的な話をすると、株価が上がった時よりも、ずっと欲しかった株を十分に安全な領域で購入できた時に喜びを感じるという感じです。

ただ、このような「バリュー投資」の思想は、日本ではあまり人気がないようには思われます。

株式投資の2つのアプローチ手法と本書からの学び

投資

本書にも書いてあり、良く言われていることではありますが、簡略化して言えば、企業への株式投資のアプローチは二つの基本型に分けられます。

ファンダメンタルズ分析(事業内容や業績などの基礎的要因に基づく分析)とテクニカル分析(過去の株価動向の研究)です。

テクニカル分析というより「チャート分析」という言葉の方が馴染みがあるかもしれませんが、日本ではこのテクニカル分析を用いた短期トレードが人気なように思います。

ただ、どちらの手法でも成果を出している人がいる以上、どちらの手法を使うのかは思想の問題なのかなと、個人的には思います。

また、「両方使います」という人も中にはいるのかもしれません。

いずれにせよ、成果を出し続けている人から学び続けるというのが重要なポイントだなと、本書を読んで改めて思ったところです。 

バリュー投資家とグロース投資家の違い

バリュー投資家とグロース投資家

ついでに本書にはバリュー投資家とグロース投資家の違いについても書かれていたので、メモしておきます。

・バリュー投資家は、(たとえ本質的価値が将来的にほとんど増大しないとしても)現在の本質的価値が現在の株価との相対比較で見て高いと確信すれば、その株式を買う

 

・グロース投資家は、(たとえ現在の本質的価値が現在の株価との相対比較で見て低くても)将来的に十分な利益を生み出すほど本質的価値が急増すると確信すれば、その株式を買う

ただ、「この2種類の投資手法をはっきりと線引きすることはできない」というのが、ハワード・マークスの主張です。

グロース投資は将来性を重視し、バリュー投資は現在の価値を重視するが、将来性についても織り込まないわけにはいかない

バリュー投資家が将来性について全く考慮していないかというと、それは違うよなと思っていたので、結局この2種類の投資の違いは「何にどれだけ重点を置くかという程度の問題である」という説明は、個人的にはしっくりきました。

投資を学びたく無い人には「インデックス投資」が無難

インデックス投資

さて、ここまで色々とメモをつらつらと書いてきましたが、投資に関心はあるけれども何かを学んだり調べたりするのが面倒くさいという方には、正直バリュー投資もグロース投資もお勧めはできません。

全自動で全てお任せの資産運用はロボアドバイザー

最近は日本でもロボアドバイザーのWealthNaviなどがありますので、そのような完全に資産運用をお任せするフィンテックサービスを使う方が賢明なように思います。

もしくは、そんなに大きなリターンは得られないけれども、そこそこのリターンで良いのならば、ETFや投資信託でのインデックス投資が無難なように思います。

また、ウォーレン・バフェットも言っていますが、自分できちんと調べたり考えたりするプロセスを取らずして投資を行うのならば、株式投資をするべきではないでしょう。

そして、更にリスクを取りたくなければ、積み立ての保険が良いんじゃないかなとも思います。年数が必要なので途中で換金はできなかったりしますが、定期預金よりは利率が良いですし、殆どリスクも無いでしょう。

富裕層が好む「劣後債」という選択肢

富裕層

他には、先日銀行時代の同期と話していても思ったのですが、「劣後債」は富裕層には結構人気なように思います。

劣後債は、企業がお金を調達するために発行する債券の一種なのですが、Wikipedia先生によると、

償還や発行体の解散または破綻時に他の債務への弁済をした後の余剰資産により弁済される債券である。

購入者の立場からは、普通の債権よりもリスクが高まる代わりにリターンも高くなる金融商品である。

という説明がなされています。

例えば、3年後に償還される(平たくいうと3年後に利息がついて現金が手元に戻ってくる)三菱東京UFJ銀行の劣後債を購入したとします。

三菱東京UFJ銀行が3年以内に破綻した場合、弁済する順位が普通の債券よりも劣後する(=そのため投資したお金が戻ってこないかもしれない)けれども、その分普通の債券よりも利回りは良い金融商品ですよ、という感じです。

ただ、そもそも三菱東京UFJ銀行(債券の発行体)は、今後3〜5年ぐらいで破綻するのだろうか?というところで、多くの劣後債購入者は「まあ破綻はしないだろうな」と考えて、購入に踏み切っています。

劣後債のリスクも基本的には発行体のデフォルトリスクぐらいですので、実際銀行時代の顧客層(中小企業のオーナーなど)の中には、劣後債に個人で1億円投資をしている人などもちらほらいました。

すでに数億円〜数十億円の金融資産を保有している人にとっては、株式投資などで大きくリスクを取って更に儲けるというよりも、いかに減らさないか?、微増でも良いのでいかに低リスクで着実に資産を増やすか?に思考が変わっていくのでしょう。

アルトコイン投資について思うところ

アルトコイン投資

最後についでなので「アルトコイン投資」についてもちょっと書いておきます。

すでにPholoniexなどの海外の仮想通貨の取引所で取引されているアルトコイン銘柄に関してはテクニカル分析がいるのかもしれませんが、コインが発行されるICOのタイミングで購入する場合は、そもそも過去のチャートなどありません。

そのため、ここに関してはとてもVC的な投資(投機?)っぽいなと思っています。

得られる情報に限りがあるという点では、投機に近いのかもしれませんが。

VCとは異なり、株式の議決権もなければ、起業家とともに歩んでいくこともないけれども、誰でも未上場企業(プロジェクト?)に投資することができます。

つまりは、大してお金を持っていない人でも、エンジェル投資家やVCっぽい投資ができてしまうという点が、非常に面白いなと思っています。

そのサービスやプロジェクトにいかに可能性を感じるかという…

VCは銀行とは違って、企業のPLやBSなどの財務的な部分以外のトコロを見て評価する必要があると思いますので、それとちょっと似ている気がしてならないのです。

少なくとも、有価証券報告書を見て判断する上場企業への株式投資や銀行の融資とは、かなり異なる投資プロセスをとっていると言えるでしょう。

ちなみに似たような話は前も書いたのでご関心のある方は「ベンジャミングレアムの賢明なる投資とポールグレアムの投資」をご参照ください。

いつかICOがもっと主流になった時、VCはどうするのかなあとふと思ってしまいましたが、一斉に全ての企業がシフトすることもないので、当面は企業の資金調達の仕方も色々なのでしょう。

なんだか本書から派生して色々と書いていたら長くなってしまったので、気が向いたらまた別の部分の読書メモを書こうかと思います。