金融とテクノロジー雑記

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ICO(Initial Coin Offering)の特徴と面白さ

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先日投資ファンドの友人と話していて「ICOって何が面白いの?」と聞かれたこともあり、「ICO(Initial Coin Offering)」で面白いと思った点でも整理しておこうかなと思いました。

興味や関心の対象は人それぞれ違うので、個人的には面白いと思ったものでも別の人から見たら特に面白くもなんともないというのは、往々にしてあるなと思った次第でした。

去年や一昨年ほど投資対象としてICOが騒がれている感じもしませんし、自分も興味が薄れて来た感じはありますが、折角なのでメモしておきます。

ICOとは

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僕のブログを読んで下さっている方々は殆どみなさんご存知かと思いますが、一応まずはICOの説明をこちらの記事が分かりやすそうだったので引用しておきます。 

ICO(Initial Coin Offering)とは、ある定義によれば「新規の暗号通貨プロジェクトが、その暗号通貨トークンの一部をアーリーアダプターや支援者に、お金と引き換えに売り渡すことである」*1とされる。

 

この定義では、暗号通貨を発行すること自体を目的とするプロジェクトのみを対象とするように見えるが、実際にはより幅広い目的のプロジェクト、例えば電力のP2P取引や、ライドシェアリングであっても、それらのプロジェクトに付随する暗号通貨があれば、それらを新規で発行して、資金を調達することも含まれる。

 

特に、このような別の目的があるプロジェクトの場合は、当該のサービスが完成する前に、通貨部分だけを構築して売り出し、資金を調達することで、その後のサービスの構築費用や、マーケティングの費用を捻出することが可能になる。

 

なお、ICOは「クラウドセール」や、「プリセール」と呼ばれる場合もある。

ICOについては以前ご紹介した「ブロックチェーン革命 分散自律型社会の出現」や大石さんのブログにも載ってますので、ご関心のある方はそちらをご参照ください。

投資家サイドから見たICOの面白い点

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僕がICOを投資対象として考えた時に面白いと思った理由を一言で言うと、「VCの投資」っぽいからです。

通常多くの人はVCで投資をする機会は無いと思うのですが、一般人でもICOを通じてVCのような投資ができてしまう点が、とても面白いと感じたのです。

VCの投資っぽいというのは、未公開企業(というかプロジェクト)に投資できるという点もそうですが、どちらかというと財務諸表以外の観点からその投資対象が今後成功するのかどうかを検討するという点においてです。

例えばVCが、アーリーステージのスタートアップに投資する際の基準としては、市場の大きさやプロダクトの良し悪し、メンバーの経歴などが挙げられるでしょう(もちろんVCによって異なると思いますが)。

もちろん中長期の株式投資においても、市場やサービス、経営陣などに関して考慮をします。

ですが、投資対象の上場企業の業績が公開されている以上は、その企業の「財務的な部分の調査(有価証券報告書を読むなど)」をすっ飛ばして投資を実行するというのは、中々考えられません。

一方、ICOにおいてはそもそもプロジェクトの財務諸表もありませんし、過去の実績もありませんので、言ってしまえば将来への希望的観測のみで投資(投機?)を実行します。

ICOは上場企業への株式投資と違って、投資家によって得られる情報量には差があるでしょうし、インサイダーも発生しうるとは思います。

ですが、非常に限られた情報の中だけで「そのプロジェクトは成功するのか?(≒コインの価値は上がるのか?)」を考えるという点は、ある意味非常に分かりやすい投資プロセスのように感じました。

こう言い切ってしまうと異論はあるようにも思いますが、他にも株式投資と比べた時にICOは検討しやすいと思える点があります。

株式投資とICO投資の異なる点

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例えば、株式投資には「株価が割安な時に購入する」というバリュー投資の考え方があります。

このような投資スタイルの場合、株式購入の際には「その株式は割安なのかどうか?」を常に気に掛けなければなりません。

一方、ICOの場合はそもそもプロジェクトが発行するトークンが割安なのかどうかを検討する必要はなく、「そのトークンが上がるか?(=プロジェクトが成功するのか?)」だけを考えれば良いのです。

もちろんICOに参加する日付によって、トークンを手に入れるためのBTCの量が変わったりする場合はありますが、ここまで書いてきたように、そもそもが株式投資とはかなり性質が異なるものであり、なんだかVCっぽい投資だなと思うのです。

ICOのリスク

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色々とICOの面白い点を書いてきましたが、もちろんICOにも色々なリスクは存在します。

ICO投資のリスクとして思いつくのは、当たり前ですが、そもそも投資先のプロジェクトが上手くいかないというリスクです。

これは例えばVCが初期のスタートアップに1,000万円投資したにも関わらず、数年後には投資先の会社が倒産し、元手が0円になってしまうような場合と似ています。

むしろ投資金額の何十倍ものリターンを得られる方が少ないと言っても、過言では無いでしょう。

また、このようなリスク以外にも、コインの盗難や紛失リスク(盗まれても誰も訴えることができない)、国の規制によっていきなりICOが禁止されてしまうリスク、トークンが配布されてから引き出すためのPWを失念してしまったりするリスクなども考えられます。

更には、トークンを配布されてからビットコインに換金するタイミングや、それを法定通貨に換金するベストなタイミングなどは、正直誰にも分からないのでは無いでしょうか。

このような色々と不明瞭なものに投資(投機?)をしてしまうというのは、ウォーレン・バフェットなどの投資家の思想(これだと思った企業の株式を半永久的に手放さない)とは、相容れないもののようには思います。

僕自身もICOに全資産を投入しようとは全く思いませんが、自分が失っても良い程度の金額であれば、ICOを通じてなかなか貴重な体験はできるのでは無いでしょうか。

投資・投機的な側面以外でのICOの面白い点

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以上のようにICOにはメリットとデメリットがある訳ですが、上記のような投資・投機的な側面以外でも、個人的にICOを面白いと思う点はあります。

まず、そもそも「遠く離れた異国のプロジェクトに、一個人が少額からインターネットとビットコインを通じて投資に参加できる」という点が非常に面白いと思いますし、更にそこに「第三者機関が不要」という部分が革新的なように思います。

海外のプロジェクトに投資するという点で言えばKickstarterやIndiegogoなどのクラウドファンディングでも可能ではありますが、そこには必ずクラウドファンディング事業者という第三者機関が存在します。

一方、ICOの場合はトークンの発行体と自分との関係性になりますので(日本円をビットコインに換金する上で取引所を通すという点では第三者機関を経由してはいますが)、金融業界にいた自分の感覚としては、この「第三者機関が不要」というのは、結構衝撃的なのです。

ただ、この話をした際に、冒頭の投資ファンド勤務の友人にはあまりピンとこなかったようですので、逆に第三者機関がいるからこそ安心できるという思想もあるのかもな、と改めて思った次第ではありました。

資金調達サイドから見たICO

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最後にちょっとだけ資金調達サイドから見たICOについても書きますが、資金調達サイドでICOを利用するメリットは、例えばVCからの資金調達と比較してみると、そもそも「株」が無いので、議決権や株式持ち分などの話が出てこないという点が挙げられるでしょう。

上場や売却への圧力もなく、そもそも会社という形態でなくても世界中の人から資金を集めることができ、更には自分のやりたいことを実現できるのです。

他にもクラウドファンディングと比べても、コストや資金が振り込まれるまでの日数などの点で優位なように思いますし、融資での資金調達のように金利を支払わなければいけないということもありません。

ICOについては色々と規制も進みそうだなというのが最近思うところですので、引き続きICOがどうなっていくのかは見ていこうかなと思っています。