メルカリの山田社長が以前ブログで紹介されていたこともあり、ラム・チャランの「取締役会の仕事」を再読しました。
この本を最初読んだ時に強く印象に残ったのは、CEOのサクセッションプランの話です。今回改めて読み直し、非常に参考になる部分が多かったので抜粋して記録しておきます。
取締役会のリーダーシップ
本書では、取締役会が協力すること、監視すること、責任を持つこと、関与しないこととして以下が挙げられています。
取締役会が協力する
- 戦略、資本配分
- 財務目標、株主価値、ステークホルダーのバランス
- リスク選好度
- 資源配分(合併や買収を含む)
- 人材開発
- 「決断する企業文化」の育成
取締役会が監視する
- 株主価値
取締役会が責任を持つ
- 基本理念
- CEOの専任
- 取締役会の能力、構造、運営方法
- 論理と高潔性
- 報酬体系
取締役会は関与しない
- 業務遂行
- 業務運営
- 経営陣に委譲された権限
- 非戦略的な決断
- 取締役会憲章によって除外されているもの
続いて、本書ではどんな取締役が良いのか?という取締役を選ぶ際や、取締役を継続してもらうべきなのかを考える上で大変参考になる観点が紹介されています。
リーダーシップを発揮できる取締役の8つの条件
- 会社全体、顧客価値、競争力について戦略的に考え、基本理念の展開に継続的に貢献できるか
- 運営上の細かなプロセスに介入することなく、取締役会の議論に貢献できるか
- 基本理念にもとづいた戦略の立案と遂行にかかわった経験があるか。市場が混乱しているときに新しい方向性を示すことができるか
- ほかの会社で、経営陣と連携しながら、基本理念にもとづいた新しいビジネス手法を開発し、導入した実績があるか
- 取締役会に新しい知識と経験を提供して、基本理念、戦略、遂行能力を強化したり、あるいはそれらの弱点を補強したりすることができるか
- 重要な問題が生じ、リスクとストレスが高まり、リーダーシップがいつにも増して重視されるときに、断固たる態度で建設的に取り組むことができるか
- 取締役会をより効率的に運営するうえで役に立てるか。たとえば、議論されているテーマとは関係のない個人的な経験を持ち出してエネルギーを無駄に消費することなく、敬意を持って正しい質問をすることができるか。知性のある対話をすることができるか
- 取締役会だけではなく、経営陣にも本物の価値を付加することができるか
取締役一人一人の価値評価
- 取締役会に役立つスキルや経験を提供しているか
- 準備したうえで取締役会に臨んでいるか
- 基本理念と企業戦略を理解しているか
- 有益な質問をしているか
- 事業の展開に役立っているか
- 議論を前に推し進めているか
- 取締役同士の関係や、取締役と経営幹部の関係が良好なものになるように努めているか
また、CEOのサクセッションプランの観点で、正しいCEOを選ぶための指針も紹介されています。
正しいCEOを選ぶための10の指針
- 戦略を立てる
- CEOと後継者の評価システムを導入する
- CEOの評価項目に「後継者育成計画」を加える
- 承継プロセスに責任を持つボードリーダーを置く
- 優秀な候補者をやめさせない
- CEO候補が社内にいる場合、候補者全員と働いたことがある人に評価してもらう
- 情報を確認するために情報源と候補者の両方に話を聞く
- 利害の対立を下げるために外部コンサルタントは慎重に選ぶ
- 秘密裏に行う
- 承継計画を企業文化に組み込む
CEOの評価項目に後継者育成計画を加えたり、承継計画を企業文化に組み込むというのは非常に大事なことなように思います。
例えばこれはCEO以外にも、役員が後任の役員を考えたり、部長が後任部長のことを考えたりすることは、組織が中長期的に成長していくためには必要な要素と言えるでしょう。
また、本書ではCEOが適切な人材なのかのチェックリストなども紹介されています。
CEOに関するチェックリスト
- 明確な戦略が欠如している
- 優先順位の高い業務に集中しない
- 途中で関与を放棄する
- 予期せぬ結果を想定していない
- 他の経営幹部の判断を過度に頼る
- アドバイザーの言いなりになる
- 事業部門の経験のない経営幹部を事業部門の責任者にする
CEOはどうあるべきなのかというのは会社によっても違う部分はあるかとは思いますが、ここで紹介されているのはかなり普遍的なリストのように感じました。
最後に、タイコ・インターナショナルの事例では、CEOとボードリーダーの役割分担が以下のように記載されていました。
CEOとボードリーダーの役割分担
- 取締役会と機能的で良好な関係を築く、責任を果たす
- 価値を生み出す建設的な会議を追求する
- 適切な問題に集中し、有益な情報を提供する
- 重要な情報は(好ましいものもそうでないものも)取締役会に適時、報告する。オープンで誠実な姿勢を保つ
- 会議のほか、様々な機会を利用して取締役から知識と知恵を引き出す
- 取締役会に競争力をつけさせる
- 取締役会がマネジメント層の上層部と自由に接触できるようにする
CEOや取締役会、経営陣の評価というのはなかなか難しいものがありますが、いずれも適切にサクセッションがなされ、企業が中長期的に成長していくようにきちんと仕組みで設計しておく必要はあるのでしょう。