金融とテクノロジー雑記

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ディズニーCEOが実践する10の原則 | ロバート・アイガー氏の本の感想

ディズニー

元ディズニーCEOのロバート・アイガー氏の著書「ディズニーCEOが実践する10の原則」を読みましたので感想をまとめておきます。

強力なブランドを持つウォルト・ディズニー・カンパニー

ディズニー株価

著者であるロバート・アイガー氏は、2020年2月にCEOを交代しました。

その時にはコロナショックもありディズニーの株価は一時期急落しましたが、2021年1月現在では、すでにコロナショック前の水準以上に回復しています。

この株価の戻りや、同じように強力なブランドを築いているスターバックスなどの推移を見て、改めて強力なブランドを築いた企業の回復は早いなと感じた次第です(もちろん過去からオフライン以外の事業への打ち手を打っていた結果かとは思いますが)。

ちなみにディズニーの事業は、テレビなどのメディア・ネットワーク事業、ディズニーランドなどのテーマパーク事業、映画などの映像事業、物販などのD2Cと海外事業などから成り立っているようです。

今のところメディア事業は高収益を維持して推移していますが、Netflixなどが台頭指摘ている現在においてはいつまで続くかわかりません。そこで、自社のメディア事業の収益減少にも繋がりうるストリーミング事業の『Disney+』などを、ディズニー自ら行う意思決定をして現在は推し進めています。

自社の収益が短期的には減少することにもなるかもしれないものの、このように将来的には稼げなくなるであろうことが見えている事象に対して先手を打っておくというのは、企業経営においてはとても重要なことのように思いました。

また、本書でも紹介されていますが、ディズニーはこれまで有名な『ピクサー』を買収したり、今では『Hulu』などもその傘下におさめています。

ディズニーは過去から強力なブランドを築いてきており、そのような企業がこれまでよりも一層テクノロジーを活用した事業を行っていくと、非常に強固なビジネスを築き上げることができるのだなと勉強になりました。

真のリーダーシップに必要な10の原則

リーダーシップ

本書ではディズニーの立て直しについてや、これまでの買収劇の裏側なども紹介されており、読み物としても面白かったのですが、所々にリーダーシップについての考え方なども紹介されており、リーダーとしての立ち振る舞いを学べる良書ともいえます。

冒頭には、真のリーダーシップに必要な以下の10の原則が紹介されています。

  1. 前向きであること
  2. 勇気を持つこと
  3. 集中すること
  4. 決断すること
  5. 好奇心を持つこと
  6. 公平であること
  7. 思慮深いこと
  8. 自然体であること
  9. 常に最高を追求すること
  10. 誠実であること

最初にこの原則だけを読んだ時はよくあるような原則のように思いましたが、本書のストーリーを読み進めるうちに、学びが多い箇所がいくつもありましたので紹介します。

経験よりも能力を評価・信頼しその社員が難なくできると思う以上の力量を必要とする役割を与えよう

トムとダンは理想の上司だった。

二人は経験よりも能力を重んじ、本人ができると思える以上の力を求められる仕事を部下に与えた。経験が大切でないという訳ではないが、二人は「才能に賭ける」とよく言っていた。

馴染みのない領域であっても、才能ある人たちを成長できる立場に置けば、自然にうまくいくはずだと信じていたのだ

個人的な経験ですが、創業者や起業経験のある上司を持つと、このような思考をする人が多いようには感じています。

それは恐らく、自分がそのようにして新しいことをできるようになっていった経験があるから、経験よりも能力を信頼できるのだろうと個人的には考えています。

優れたリーダーシップとは

優れたリーダーシップとは、代わりのいない存在になることではない。誰かを助けて自分の代わりになる準備をさせてあげることだ。

また、意思決定に参加させ、育てるべきスキルを特定し、その向上を助け、時にはこれまで私がやってきたように、なぜその人がまだステップアップできないのかを正直に教えてあげることでもある 

自分が優れたリーダーシップを発揮することに加えて、優れたリーダーシップを発揮できる人を育てることが重要という話でした。

これは他のリーダーシップ本にもよく書かれていることかもしれませんが、CEOも未来永劫その役割を続けていく訳ではないので、どこかで後任にその襷を渡す必要が出てきます。

その将来訪れるであろう確定している未来に対して、予め準備をしておけということかと思います。

企業買収について

自分たちが本当のところ何を手に入れるのかがよく分からずに買収を行ってしまう企業は多い。

買収は、物理的な資産や製造設備や知的財産を手に入れるためだと彼らは思っている(確かに、産業によってはその考えが当てはまる場合もなくはない)。

だがほとんどの場合は、買収によって手に入れるのはそこにいる人材だ。クリエイティブな産業では、そこにこそ本当の価値がある

この買収については、「今から買収しようとしている企業にいる人材は、買収でしか手に入らない人材なのか?」というのは改めて問うべき問いだなと思いました。

特に優秀な創業者などは採用で手に入れることはできないため、一緒に働いていくためには、時には企業ごと買収するしかないとも言えるでしょう。

逆に企業を買収したとしてもビジネスだけを手に入れ、優秀な経営者が全て抜けてしまうような買収は、結果として上手くいかないことも多そうな気がしています。

採用する時のルールとクビを言い渡す時のルール

採用

本書では採用についてや、クビを言い渡す時についてのアドバイスも記載されています。採用については以下です。

誰かを雇い入れる時、仕事ができて善良な人を周りに置くように努めよう。

人間として素敵な人、つまり公平で率直でお互いに敬意を払うことができる人に仕事でお目にかかることは、残念ながらそれほどない。

だからこそ、尊敬できる人を採用し、善良な社員を育てよう

これまで個人的にも新規採用にはかなり関わってきましたが、人間として素敵な人を採用するのが重要というのは一つの真理と言えるでしょう。

スキルや知識は入社後でも身につけていくことができるものの、人間的な部分や仕事へのマインドセットを変えるのは難しいと感じています。

クビを言い渡すのに良い方法などないが、私には自分の中で決めているルールがある。直接言い渡すこと。誰かのせいにしないこと。

決断を下すのは自分だ。但し、その人の人間性ではなく、仕事の成果を評価すること。そしてあなたが決断を下したとうことを相手に知らせなければならない。

クビにすると決めて呼んだら、世間話はいらない。私はいつも、こんな風に切り出す。

「今日ここに来てもらったのは、難しい決断をしたからだ」

それから、できるだけずばりと問題を指摘し、何がうまくいっていないのか、その状態がなぜ変わらないと思うのかをはっきりと簡潔に説明する。

またこれが私にとって難しい決断であること、そして相手にとっては一層辛いことはわかっていると語ることにしている。

クビを宣告するのは辛い仕事ではあるものの、日系企業とは異なり、外資系企業では「クビ」という選択肢があるのは、ある意味良い文化だと感じています(それが会社にとっても、クビを宣告された人にとっても中長期的に見て良いことであるならば)。

また、日系企業で採用ミスが起きたとしても、それに上手く対処できるマネージャーというのは本当に少ないように思われます。そもそも「クビにする」という文化もなければ、それをやり慣れている人も殆ど存在しないからです。

そのため、基本的には「まずいとわかっているものの対応が後手後手になる」というのがよくある話で、会社にとってのマイナスの人材をそのまま野放しにしておく場合が殆どでしょう。

採用については、運よく自社にフィットする優秀な人材を採用できたというラッキーパンチがあるかもしれませんが、採用ミスへの対処に関してはラッキーパンチはなく、マネージャーが責任を持って対処するしかないのです。

交渉については敬意を持って相手と接する

交渉

最後に、交渉についてです。

交渉ごとにおいて、敬意を持って相手と接することの大切さがわかっていない人は多い。

少しの敬意が大きな見返りを生み、逆に敬意がなければ大変な損をすることもある

個人的にも、相手に動いてもらいたいと思っている時ほど、敬意を持って相手と接した方が良いことが多いようには思います。

例えば、ベンダーとクライアントという関係性があった時に、「ベンダーを下に見ているようなクラアントに協力したいと思うだろうか?」というのがあります。

過去にコンサルタントをしていた時に、コンサルタントを扱うのが上手いクライアントと、コンサルタントを扱うのが下手なクライアントというのが存在しました。

結局のところこの差は「役割」の違いを認識しているかどうかであり、どちらが上でどちらが下という気持ちを持っている限り、なかなか上手くいかないのでしょう。現在事業会社にいる自分も、改めて気をつけて接していきたいと感じた次第でした。