金融とテクノロジー雑記

勉強になった本のアウトプットなど

爆速成長マネジメント(High Growth Handbook)の感想 | 10→1000フェーズの組織の参考書

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イラッド・ギル氏の「爆速成長マネジメント」を読みました。

組織規模を10人→1000人にしていくフェーズの企業の参考書として、とても有益でした。企業規模がちょうどそのようなフェーズにある会社に所属している人や、これからスタートアップを始めようという起業家にとてもお勧めできる本なように思います。

本書で参考になった部分を以下にメモしておきます。 

CEOのタイムマネジメントで重要な要素

CEOの責務として、自身の時間で最もレバレッジが効くものを判断しなければならない。

そのためには「ノー」をたくさん言えるようになるのが重要だ。自分自身のタイムマネジメントで重要な要素は次の通り。

  • 権限移譲
  • カレンダーの振り返り習慣
  • ノーという回数を増やす
  • これまでの働き方が通用しないことを自覚する
  • 人生で本当に大切なものに時間を充てる

CEOのみならず、働く上で時間の使い方というのはとても大事で、何に時間を使うかで挙げられる成果が変わってくるように思います。

経営幹部の採用

経営幹部

経営幹部の採用に関して、リファレンスチェックの重要性や、採用の観点について書かれています。

リファレンスチェック

リファレンスチェックで必ず聞くべきなのは「この人がうちの会社に入社したら、あなたも入社してくれますか」という質問です  

3ヶ月ではなく、6〜12ヶ月の先読みを意識する

6〜12ヶ月先読みタイプこそが極めて優秀な経営幹部です

課題が可視化される頃には「ああ、それにはこう対応すればいいよ」と即答できるのです 

組織規模にあった人材採用を

20人のエンジニアリング部門のリーダーを任せるのに、1万人のチームを率いた経験のあるエンジニアリング担当役員は必要ない。

今が20人規模なら、50人から100人規模のチームを率いた経験があり、次の12〜18ヶ月で会社を適切な水準にスケールさせられる人を採用しよう。

同じような話は別のところにも記載されていましたが、10人→100人規模の組織を作れることと、元々100人規模の組織をマネジメントした経験は、全く異なります。

自社に必要なのはどっちの人材なのか、ここは採用前に良く人材要件を定義してから採用を行った方が良いのでしょう。

組織の穴を埋める「ギャップフィラー」という仕事

6ヶ月先、12ヶ月先、さらには18ヶ月先のことを考えてきた経験のある人なら、優秀な経営幹部を見つけるのに3〜6ヶ月かかることがわかるでしょう。

採用した新人の経営幹部が担当部門のチームを確立するのに数ヶ月かかります。そのチームがうまく機能するのにさらに数ヶ月。

なので、将来に備えて必要な組織をつくるには、ある意味、1年くらいの期間が必要ということです。それなりに時間がかかるものなのです。

また、本書では組織の穴を埋めるギャップフィラー、絆創膏という仕事が紹介されています。 急成長中の組織には常に人が足りないため、一時的に他の部署の人がマーケティング領域や人事領域なども担ったりといったことが起こりえます。

文化・価値観に基づいた人材採用

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人材採用においても、会社の軸となる価値観や文化を明確にすることの重要性や、どういう人材を採用してはいけないかが記載されています。

ミスマッチのサインに注意する

  • 入社の動機が金銭的な人
  • 傲慢な人
  • 職場に悪影響を与えそうな人

上記のような人を採用してしまった場合、どの場合も中長期的な組織のパフォーマンスにはマイナスになってしまうというのは良く分かります。長期的な視点での判断が必要であり、本書には以下の記載もありました。

空いているポジションにやっと良さそうな人を見つけたけれど、企業文化の基準からはギリギリ、あるいは全く合わない人だったというような状況だ。

そのような採用は見送ろう

「迷ったら採用しない」という方が結果として良いことが多いのでしょう。

カルチャーへの加算

価値観やワークスタイルに対する考え方が一致している、あるいはこの会社で仕事をする方法を身につけて働ける、という観点から採用を判断するのが良いと思います。

こうした考え方を「カルチャーへの加算」と呼んでいる会社と一緒に仕事をしたことがあります。

「すでにある形にフィットする人」より、「私たちが今最も必要なものを足してくれる人」を採用するという考え方です。

もちろん名称よりも、どのように表現するかの方が重要ですが、それでも使う言葉には意味があります。言葉には影響力がありますから。

良く採用でもカルチャーフィットの重要性は話題になりますが、この「カルチャーへの加算」という観点も大切だなと思いました。

行動へのフィードバック

フィードバック

ボードメンバーのみならず、メンバーへのフィードバックでは、以下の考え方はとても有効に思いました。

例えば、「あなたはコミュニケーションが上手です。あのプロジェクトでは良い働きをしてくれました」は悪い例です。

良いフィードバックは「あなたは関係者がプロジェクトの最新のステータスがわかるようコミュニケーションを図っていました。また、チームでは課題に取り組んでいる間、同僚の助けとなるよう動いていたのはとても良かったです」というものです。

その他の章でも、どのように組織のメンバーに考えを伝えていくかという観点で、オペレーションストラクチャーの話が挙げられいました。

オペレーションストラクチャーは特定の作業プロセスに紐づけるのではなく、「業務の取り組み方で期待しているのはこういうもの」と説明する資料です

例えば、これはオペレーションの詳細なマニュアルを作ってしまうのではなく、「こういうことを期待している」とメンバーに伝えることで、具体的な運用ルールなどはメンバーが自身で検討して作成していくといったようなものかと思われます。

マーケティングと広報

マーケティング

広報が最も活躍できる場合とは

広報が最も活躍できるのは、創業者やCEOと広報チームが信頼関係を築けている会社です。

どうやったら優秀な広報人材を見分けられるのか

もちろんある程度経験は重要ですが、私たちの仕事内容を考えると、他人からの推薦と対人スキルが大事です。

なので、採用候補者があげた人たち以外からもその人の評判を聞くバックチャネルのリファレンスチェックを重視しています。

 シリコンバレーの広報の世界は狭いですし、広報において良い人間関係を築く能力はとても重要だからです。

探し方としては、取締役やアドバイザー、知り合いの貴社に適任者がいないか聞くのが良いと思います。まずは広報担当者がよく関わる人たちに良い人がいるか聞いてみてください。

マーケティングについては、別の章ではありますが、以下のような格言もありました。

アーリーアダプター層はマス層ではない

アーリーアダプター層は市場全体では永遠の少数派です。

ここで多くの起業家、特に技術系の創業者が犯す間違いが、残りの市場全てがアーリーアダプター層のように振る舞うと期待することです。

アーリーアダプター層は市場のメインストリームではないので、今自社のプロダクトがどのフェーズにいるのかは、常に意識していたいところです。

成功する新規事業の秘訣とは?】アーリーアダプターを活用したアプローチ方法 | NIJIBOX BLOG

https://nijibox.jp/blog/early_adapter/

割合からすると、ざっくり市場の15%まではアーリーアダプター層(自身の情報収集から採用し、他の消費者の意思決定の参考材料となる人)と定義されています。

このフェーズが数年などかかっていると、まるでもう市場の潜在層を全て刈り取ったかのように感じてしまいますが、実際にはまだまだアーリーアダプター層の枠の範囲内ということは往々にしてあるのでしょう。

プロダクトマネジャーの4タイプ

マネージャー

ビジネス型プロダクトマネジャーは顧客の要望をロードマップに落とし込むのがうまい。

技術型プロダクトマネジャーの多くは優れた技術力を持ち、インフラや検索品質、機械学習などプロダクトの裏側の部分でエンジニアと協力して仕事をするのが得意。

デザイン型プロダクトマネジャー。コンシューマープロダクトを担当していることが多く、ユーザー体験を重視する。

グロース型プロダクトマネジャー。分析的で数字を重視する。顧客のプロダクト利用で最も重要な指標を見つけ、その指標を改善するのが得意。

個人的に今まで明確に分類していなかったプロダクトマネージャーを、本書では4タイプに分けて説明してくれていました。

これによって大分自分の中ではプロダクトマネージャーのイメージが腹落ちしました。

個人的には、これまでプロダクトマネジャーというと、技術型プロダクトマネジャーやグロース型プロダクトマネジャーのイメージを持っていましたが、上記のように4種類に分けることができるのだと考えることができるようになりました。

個人的には、ビジネス型プロダクトマネジャーはグロース型プロダクトマネジャーと同一になることもあるようには思いましたが、いずれにせよプロダクトマネジャーを採用する上での質問項目なども記載されており、大変参考になりました。

M&A

最後に、本書ではM&Aについても企業買収の3タイプに分けられて書かれています。

  • チームの買収
  • プロダクトの買収
  • 戦略的買収

M&Aは目的を明確にし、それぞれのタイプの場合の検討項目や注意点なども明確に記載されており、とても参考になりました。

M&Aは企業価値が時価総額10億ドル以上であれば積極的に検討していくべき成長手段の1つとして本書では記載されていたため、そのような機会があれば本書の観点は活用していこうと思います。