「ビジョナリー・カンパニーZERO ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる」の書評です。
以前にビジョナリーカンパニー2を読んだ時にも、第五水準の経営者の話や、誰をバスに乗せるかという話はとても印象に残っていたのですが、今回改めてこのzeroを読んで、誰をバスに乗せるかという大原則を思い出しました。
また、本書では「もっとも重要な問いは「私は何をすべきか」ではなく「私はどのように時間を使うべきか」だ」という一文があり、今よりも大きな成果を出したいのであれば、時間の使い方を変える必要があると改めて認識しました。
他にも本書で印象に残った箇所を以下に記載しておきます。
- 偉大な企業とは何か
- 誰をバスに乗せるか
- 一番重要な指標を追跡する
- 組織のビジョンを策定するためのフレームワーク
- 戦略とは何か、言葉の定義の共通認識を持つ重要性
- 金銭的インセンティブが必要なのは採用が間違っているから
偉大な企業とは何か
まず、本書では偉大な企業を、以下の4つの基準を満たす組織として定義しています。
- 業績。偉大な企業は(きわめて収益力の高い事業を通じて)自立して事業を営むのに十分なキャッシュフローを生み出す。それに加えて、リーダーやオーナーが設定した他の目標も着実に実現してきた実績がある。浮き沈みを経験し、ときに厳しい局面に立たされることがあっても、偉大な企業は常に復活し、再び優れた業績をあげるようになる
- 影響。偉大な企業は主導的立場で市場を形づくっていく。必ずしも最大手である必要はない。規模だけでなくイノベーションによって業界に影響を及ぼすこともできる
- 評価。偉大な企業は社外の人々から称賛と尊敬を受け、ロールモデルになることが多い
- 持続性。偉大な企業には持続力があり、何十年にもわたって健全であり続ける。並外れて偉大な企業には自己再生能力があり、偉大さの基礎を形づくった個人を超越し、経営陣が世代交代をしても偉大さが持続する。永続する偉大な企業を築くというのは、100年にわたって偉大でありつづけることを意味する
上記を読むと、業績に加えてそれ以外の基準も、偉大な企業になるためには必要であることがわかります。
例えば評価の部分は、社内の人から単に「働きやすい企業」と思われているのではなく、「働きがいがある企業である」と思われていたり、社外の人からは「あの企業で働いているのは凄い」「自分もあの企業で働いてみたい」「あの企業出身の人は優秀だ」と思われるような企業になっていることなどもポイントなのかと思われました。
誰をバスに乗せるか
なによりも大切で、絶対に失敗してはならないのが「最初に人を選ぶ」原則だ。あらゆる事業活動のなかで正しい人材をバスに乗せること以上に重要なものはない
続いて本書でも、まず誰をバスに乗せるかを考える重要性が説明されています。これは結局のところ、成果が上がるかどうかも、誰がやるかに尽きるということでしょう。
他にも例えば、採用面接では迷ったら落とす、何かしらの不安感や違和感があるならば落とす方が良い、という採用に関してよく言われていることにも繋がるのかなと感じました。
そして、バスに乗せた人をどの座席に座らせるか?も、とても重要であると説明されています。実際に、新規社員の採用ミスだけでなく、既存社員の異動・昇格での判断も間違えると、そのリカバリーには膨大な時間とコストを要するようには思います。
そのため、新規採用と同じく、既に乗車している人をどの座席に座らせるか?についても、時間をかけて十分に吟味することは必要であり、さらに座席に座らせたものの上手くいかなかった場合どうするのか?ということも考えつつ、席の配置は検討した方が良いのでしょう。
一番重要な指標を追跡する
その指標とはバスの重要な座席のうち、そこにふさわしい人材で埋まっている割合だ。
ここでしばし考えてみよう。あなたの会社の主要なポストのうち、そこにふさわしい人物で埋まっている割合はどれくらいか。
答えが90%未満なら、あなたの会社の最重要課題が判明したことになる。
真に偉大な企業をつくるには、常に重要ポストの90%がふさわしい人材で埋まっているように努力しなければならない。
これは例えば経営メンバーであったり、重要な部門の責任者ポストに関しては、そのようなポストにふさわしい人材がついているかどうかを、常に検討した方が良いということでしょう。
偉大な企業を創っていくための企業経営においては、このようなポストと人材に関する検討が非常に重要なことだということを改めて認識できましたので、自分自身もそこには積極的に時間を割いていこうと思いました。
組織のビジョンを策定するためのフレームワーク
また、本書には、組織のビジョンは以下の3つ(コアバリュー・パーパス・BHAG)から策定され、ビジョンを元に戦略、戦術が決まるという話が書かれていました。
コアバリュー
会社の指針となる原則。会社を導く哲学。
会社の特徴を形作る人々個人のコアバリューを反映する。高い犠牲を払っても堅持される。慣行や戦略は変わってもコアバリューは不変。時代を超える。
パーパス
組織が存在する根本的理由。案内星のように、常に追い求める対象だが、決して手に入らない。
完璧に遂行すると、傑出した世界に2つとない会社になる。100年間に渡って会社の指針となる。
BHAG(Big Hairy Audacious Goal)
社運を賭けた大胆な目標。高い山に登るときのようにゴールが明確。成功の確率は100%ではない。能力を大幅に向上させる必要がある。人々の心を揺さぶり、意欲をかき立てる。容易に理解できる。理想的な時間軸は10〜25年
パーパスについては、最近本書とは別に「パーパス 「意義化」する経済とその先」という本も読んだのですが、その感想として、現代の企業経営ではますますこのパーパスの概念が重要になってきているように感じます。
戦略とは何か、言葉の定義の共通認識を持つ重要性
本書によると、戦略とは「会社の現在のミッションを達成するための基本的方法論」であり、「私たちはこのようにミッションを遂行しようと考えているというもの」との説明がなされています。
日々社内で議論していると、時々「戦略」というワードが出てくることがあるのですが、人それぞれ「戦略」という言葉に対する定義が違うように感じられる時があります。
本書で説明されているように、戦略はGoalを実現するためにどうやるのか?というHowの部分であると思うのですが、よくMTGではGoalがどこかの共通認識がないまま、戦略についてのみ話される場面があるように思われます。
そうすると議論がなかなか着地しないことがあるので、戦略のような重要な言葉については、参加者で言葉の定義の共通認識を事前に持っておくことも重要だと感じました。
金銭的インセンティブが必要なのは採用が間違っているから
私たちの研究では、経営幹部の報酬と、良い企業から偉大な企業へと飛躍するプロセスに明確な相関は見られなかった。
つまり金銭的なインセンティブは偉大な企業になる要因ではない。そもそも要因にはなり得ない。理由は簡単で、お金で間違った人材を正しい人材に変えることはできないからだ。
金銭的なインセンティブがなければ最高の成果をあげられない人には、偉大な仕事を成し遂げるのに必要な、強烈な内発的意欲や動機づけが欠けているのだ。
最後に、本書では途中で金銭的なインセンティブの話が出てきました。
個人的にも、金銭的なインセンティブが一番にくる人材というのは、結局また金銭的なインセンティブが高い企業に転職してしまうように感じています。
もちろん適切な人材にはそれ相応の報酬を提示すべきではありますが、金銭的なインセンティブ以外の部分に一番のモチベーションを感じる人材を集めた方が、偉大な企業を創るのには適しているのでしょう。