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勉強になった本の感想など

ウォーレン・バフェットのおすすめ本と投資術 | 億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術などの感想

推薦図書

年初にジョージ・ソロスの名前を見てからソロスの本を読もうと思っていたら既にこんな時期になっていましたが、先日ようやくジョージ・ソロスの本を読み終わりました。

ソロスの本でメジャーなのは「新版 ソロスの錬金術」や「ソロスは警告する 超バブル崩壊=悪夢のシナリオ」あたりかと思い読みましたが、読み終えた感想を一言で言うと、全体的に内容が難しいといったところでしょうか。

「再帰性」の話も最後まで分かったような分からないような感覚が残り、読んでみたものの、きちんと言語化して他人に説明できるレベルまで自分に落とし込めてはいないように思います。

気が向いたら数年後にもう一度読んでみようかなとは思いますが、結局個人的にはジョージ・ソロスよりもウォーレン・バフェットなどのグレアム・ドット村出身者に惹かれるところではあります。

ウォーレン・バフェットのオススメ本

そんな訳で、ソロスの本を読むついでにバフェット本も色々と読み返したので、改めてバフェット本の紹介と投資基準などをメモしておこうかと思います。

以前株式投資のオススメ本としてもご紹介させて頂きましたが、バフェットの投資手法を具体的に簡潔に解説している本は「億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術」以外、あまり無いように思います。

バフェット本であっても、具体的な投資手法ではなく抽象的な投資哲学的な部分を類推して書かれている本が多いように思いますので、バフェット本で何か一冊を読むとしたら、やはり「億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術」が分かりやすいのでオススメです。

ただ、他の本で、本書はバフェットの投資手法を単純化しすぎているとの批判もありましたので、あくまで最初の入りとしては良いといった位置づけの本なのかもしれません。

そのため「億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術」を読んだ後に、「麗しのバフェット銘柄 (ウィザードブックシリーズ)」を読むのは良いようには思います。

こちらの本も刊行年は少々古いですが、バフェットがこれまでに投資して来た具体的な銘柄などについても色々と記載されていますので、実践する際の参考になります。

この他に良くオススメされているのは、「株で富を築くバフェットの法則[最新版]---不透明なマーケットで40年以上勝ち続ける投資法」と「バフェットからの手紙 第4版 (ウィザードブックシリーズ)」かと思います。

バフェットからの手紙は少々読み辛いのですが、色々と解説付きのバフェット本を読むよりかは良いような気がします。

今回はついでなので、「億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術」で紹介されている13の質問リストもメモしておきます。

バフェット流投資のための13の質問リスト

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こちらの13項目は、バフェット流投資のためのワークシートに紹介されているものです。

投資を実行する前に検討するチェックリストのようなものと言えるでしょう。

  1. その企業は消費者独占力を持っているか?
  2. その企業の事業内容を理解しているか?
  3. その企業の製品・サービスは20年後も陳腐化していないか?
  4. その企業はコングロマリットか?
  5. その企業の一株当たり利益(EPS)は安定成長しているか?
  6. その企業は安定的に高い株主資本利益率(ROE)をあげているか?
  7. その企業は強固な財務基盤を有しているか?
  8. その企業は自社株買戻しに積極的か?
  9. その企業の製品・サービス価格の上昇はインフレ率を上回っているか?
  10. その企業の株価は、相場全体の下落や景気後退、一時的な経営問題などのために下落しているか?
  11. 株式の益利回りと利益の予想成長率を計算し、国債利回りと比較せよ
  12. 株式を疑似債権と考え、期待収益率を計算せよ
  13. 過去のEPS成長率をもとに計算する手法で、期待収益率を計算せよ

細かい詳細は本書を読んで頂ければと思いますが、バフェットの本では度々「コモディティ型」の企業と「消費者独占型」の企業の話が出て来ます。

本書では、コモディティ型の企業というのは、「他との差別化ができない低付加価値の事業を行なっている企業」です。

一方、消費者独占型の企業というのは、「ブランド価値の高い企業、あるいは取り扱う製品があたかも独占企業のように強い市場支配力を持っている企業」であるという説明がなされています。

バフェットが好むのはもちろん「消費者独占型」の企業なのですが、個人的に本書を再読して改めて頷けたのは、コモディティ型の業界で最後に生き残る企業というのは、低コスト企業であるという話です。

似たような商品で激しい販売競争に晒されている企業の場合、企業側がどんなに創意工夫を凝らして見ても、結局のところ最後に消費者が重視するのは「値段」だからです。

要は、競合他社と商品が似たり寄ったりになってしまい、自社のブランド価値を構築し辛い業界では、安く商品・サービスを提供し続けられる企業が存続していくという話です。

コモディティ型企業の見分け方と消費者独占型企業の4タイプ

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本書においてもそのようなコモディティ型企業への投資は当然推奨されておらず、避けるべき投資対象としてコモディティ型企業の見分け方7つのポイントが紹介されていますので、こちらもメモしておきます。

  1. 低い売上高利益率
  2. 低い株主資本利益率(ROE)
  3. ブランド価値を築くことが難しい
  4. 多数のライバル会社の存在
  5. 業界全体として相当な過剰生産能力の存在
  6. 利益の不安定性
  7. 収益性が設備稼働率に大きく依存する

こちらも詳細は本書をご確認頂ければと思いますが、これだけ見ても何となくコモディティ型企業のイメージはつくのではないでしょうか。

逆に消費者独占型企業をぱっと思いつくかというと、中々難しいかもしれません。

消費者独占型企業の4つのタイプ

本書では消費者独占型企業の4つのタイプが例として紹介されています。

  1. 長期使用や保存が難しく、強いブランド力を持ち、販売業者が扱わざるをえないような製品を作る事業
  2. 他の企業が事業を続けていくために、持続的に使用せざるをえないコミュニケーション関連事業
  3. 企業や個人が日常的に使用し続けざるをえないサービスを提供する事業
  4. 宝石・装飾品や家具などの分野で、事実上地域独占力を持っている小売事業

後年バフェットがアマゾンに投資していなかったことを後悔したことは有名ですので、現代ではアマゾンのようなプラットフォームそれ自体を提供する事業者なども該当してくるのかもしれません。

バフェットとソロス勝利の投資学

最後に、こちらもついでなので、投資哲学を作る上で役に立つ本として紹介したことがある「バフェットとソロス 勝利の投資学」からも、投資の達人のエッセンスをメモしておこうかと思います。

本書はバフェットやソロスなどの投資の達人を良く分析している本で、両者の投資手法の違いなども掲載されています。

投資の達人の成功する習慣23か条

  1. 最重要事項は元本を確保することだと信じている。
    それこそが彼の投資哲学の礎石である。
  2. 習慣1の結果として、リスク回避的である。
  3. 自分の性格、能力、知識、好み、および目的に基づいて独自の投資哲学を作り上げる。
    結果として、非常に成功している投資家の投資哲学は一つとして同じにならない。
  4. 投資を選び、自分独自の銘柄選択および売買手法を開発し、実証している。
  5. 分散投資なんて小鳥さんのやることだと信じている。
  6. 税金(や取引コスト)を嫌い、合法的に税金を最小化するべく手段を講じる。
  7. 自分に理解できるものだけに投資する。
  8. 自分の基準に合わない投資は拒絶する。合うもの以外には躊躇なく「ノー」と言える。
  9. 自分の基準に合った新しい投資機会をいつも探しており、自分自身で積極的に調査を行なう。
    十分な敬意に値する投資家やアナリストの言うことにだけ耳を貸す。
  10. 自分の基準に合う投資対象が見つからないときは、見つかるまでいつまでも待てるだけの忍耐力を持つ。
  11. 決めたらすぐに行動する。
  12. うまくいった投資は事前に決めた手じまう理由が現実になるまで手放さない。
  13. 神に従うがごとく自分のシステムに従う。
  14. 自分があてにならないことを意識している。間違いがわかったらすぐさま正す。その結果、損はほとんどの場合少しですむ。
  15. いつも間違いを学習経験として扱う。
  16. 経験を積めば積むほどリターンも高くなる。
    今では金儲けのために過ごす時間は減ったように見える。
    「修業は積んだ」
  17. 自分が今やっていることをほとんど人に言わない。
    自分の投資意思決定について他人がどう思おうが気にしないし、心配もしない。
  18. すべてではないにせよ、ほとんどの仕事を他人にうまく任せている。
  19. 稼ぎに比べてずっとつつましく暮らしている。
  20. 刺激と自己充足のためにやる。金のためではない。
  21. 投資のプロセスに深い思い入れを抱く(また自己充足もそこで得る)。
    個別の投資対象には思い入れを持たない。
  22. 一日中投資のことを考えている。
  23. 全財産をかけて投資をする。
    たとえば、ウォーレン・バフェットの個人資産は99%がバークシャー・ハサウェイの株式であり、同じようにジョージソロスも財産のほとんどをクウォンタムファンドに投資している。
    二人とも、個人資産の運命は彼らの運用に財産を任せた人たちとともにある。

個人的には投資の「達人」の習慣も勉強になったのですが、同時に紹介されている投資の「負け犬」の習慣も、こうなってはいけないという観点で参考になりました。

ご関心のある方は本書をチェックされることをオススメしておきます。