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ザ・会社改造の感想 | 元ミスミグループ本社代表取締役社長三枝匡氏の著書

会社改造

ザ・会社改造--340人からグローバル1万人企業へ (日本経済新聞出版)」は、プロ経営者とは何なのかを考えさせられる一冊でした。

三枝匡氏の本には、他にも「V字回復の経営」や「戦略プロフェッショナル」、「経営パワーの危機」などの著名本があります。どれもストーリー形式で書かれており読みやすく、経営を学びたい方にはおすすめの本です。

ミスミグループ本社の概要

ミスミグループ

出典:ミスミグループ本社 - Wikipedia

ザ・会社改造は、ミスミグループ本社の改革の話です。

実際に存在する企業ですので、ビジネスの内容だけでなく、三枝匡氏が社長を引き受けてからの業績や時価総額の推移なども簡単に確認することができます。

三枝匡氏は、2001年ミスミ社外取締役、2002年6月ミスミグループ本社代表取締役社長CEO、2008年ミスミグループ本社代表取締役会長CEO、2014年ミスミグループ本社取締役会議長、2018年4月、ミスミグループ本社シニアチェアマンとなっています。

今後もミスミグループが成長し続けられるのかは、後任の経営者にかかっています。本書でも三枝氏がミスミグループの社長を引き受けた際に、人材育成を一つの大きなテーマとしてしていた旨が記載されています。

あと4〜5年経てばその結果がわかるとも言えるでしょう。ミスミグループ本社のIR資料も少し見てみましたが、決算説明資料はキーメッセージとグラフで構成されたかなりシンプルなPPTでした。

個人的にはIRだけをとっても、その会社の特質というのは多少滲み出るように思います。最近ITセクターで上場して伸びている会社には、CXOレベルに投資銀行やコンサル、PE出身者などが参画しており、成長可能性に関する説明資料や決算説明資料もかなり丁寧に作られている印象で、勉強材料があちこちにあるなあと感じています。

プロ経営者とは?プロ経営者の7つの条件

プロ経営者

本書ではプロ経営者の条件が紹介されています。具体的には以下の7つです。

  1. どんな状況の会社に行っても、短期間で「問題の本質」を発見できる人
  2. それを幹部や社員に「シンプル」に説明できる人
  3. それに基づいて幹部や社員の心と行動を「束ね」、組織の前進を図れる人
  4. そしてもちろん、最後に「成果」を出せる人
  5. 業種、規模、組織カルチャーなどの違いを超えて、どこの企業に行っても通じる「汎用的な」経営スキル、戦略能力、企業家マインドを蓄積している
  6. その裏付けとしてプロ経営者は、過去に、修羅場を含む「豊富な経営経験」を積んでいる。その難しい状況に直面しても、これは「いつか来た道」「いつか見た景色」だと平然としていられる
  7. プロには自然に「それなりの高いお金」がついてくる

漠然と経営者になりたいと考えていても、起業家を経て創業者兼経営者をやりたいのか、サラリーマンで出世して所属企業の経営者をやりたいのか、汎用的なスキルをもつプロ経営者になりたいのかなどによって、それぞれ歩む道が異なってくるでしょう。

本書では明確にプロ経営者の定義がなされ、プロ経営者に必要なスキルや考え方などがストーリー形式で紹介されており、プロ経営者のイメージを作るにはとても参考になりました。

複雑な物事を簡単にできることの大切さ

ふとこのプロ経営者の条件を読んでいて思い出したのが、コンサル時代に学んだ「複雑な物事を簡単にできること」の大切さです。パートナーの研修講師が「make complicated things simple」とよく言っていました。

組織で働いていると、組織には「複雑なことを簡単にしてくれる人」と「簡単なことを複雑にしてしまう人」が存在することに気づきます。前者は多くの人の時間を削減し、本当の成果をあげてくれます。一方で、後者は多くの人の時間を奪い、本当の成果をあげてくれないことが殆どです。

しかしこの後者の人の中には、複雑にすることで成果をあげているように見せることが得意で、評価される人もいたりします。また、中には自分がそういった物事を複雑にする行動をしていること自体に気づいていない人もいたりします。

自分はいつでも前者でありたいもので、後者にならないように日々気をつけていきたい限りですし、自分が誰かを雇う際には前者の人を雇いたいなと思います。

リーダー能力はフレームワークの量と質で決まる

フレームワーク

本書では、リーダーが持っておくべきフレームワークについても解説されています。

有能なリーダーは何か異常を見たとき、「どうもこれは本来の姿ではないな」と思い、頭の中で警報が鳴る。そう思わない人は異常だと思わず通り過ぎてしまう。

 

すなわち、「何か変だな」と気づいた人は、頭の引き出しのなかに「本来ならこうだ」「正常ならこうだ」というイメージや考えをすでに持っているのだ。それと照らし合わせて、目の前の状態が正常か異常かを判断する。

あるべき姿のイメージが持てることというのは、大切なように思います。サービスにせよ組織にせよ、本来のあるべき姿をイメージできれば、その会社の特徴を踏まえて多少のカスタマイズをしつつ、最適解を見いだせるからです。

一方で、そのあるべき姿のイメージができなかったり、そもそも学んできたことが失敗事例だった場合、創業者でもない限り、会社を適切に経営していくのは難しいだろうなと感じます。

事業シナジーが得られる場合とは

他に印象に残ったのが、事業シナジーが得られる場合の解説です。

  1. 事業・商品に関連性がある
  2. 共通の技術を使っている
  3. 市場・顧客が重なっている
  4. 販売チャネルが重なっている
  5. 既存のブランドイメージを利用できる
  6. 競争相手が同じなので戦略上の連動効果がある
  7. 勝ち戦に至る重要な競争要因が同じで、こちらはその戦いに慣れている
  8. 必要とされる社内組織の強みが同じなのでそれを使える

ちょうど先日「両効きの経営」という本を読んでいたのですが、改めて既存事業に加えて新規事業を立ち上げていく際には、事前にしっかりとシナジーを考えておくことの大切さを感じました。

変われる人と変われない人

成果

ちなみに、「V字回復の経営」では2年で会社を変えられますか、ということがテーマになっていました。

この2年という期間は絶妙で、個人的にも基本的には人の評価というのは、1〜2年の働きぶりで大体判断できるのではないかと思っています。

1年目でなかなか成果が出なくて2年目でようやく成果を出せる人というのは、1年目でも何かしらの変化の兆しが見られるものです。逆に1年目で全く変わらない人は、2年目でも変わらず、その後も急カーブのような成長曲線を描くことはないとも考えています。

「ああ変わったな」とふと思う瞬間があった人というのは今後も変わっていき、「1年経っても変わらないなあ」という人は、2年経っても変わらず、きっとその後も変わっていくことがないように思われます。

有名な大前研一さんの言葉に、人が変わるには3つの方法しかないという言葉があります。① 付き合う人を変えるか、② 住む場所を変えるか、③ 時間の使い方を変えるの3つです。

私自身も歳を取るごとに、自発的に上の3つの何かを変えていかなければ、得られる成果も変わらないということを感じています。

修羅場経験の多さが経営者の技量を高める

最後に、もっとも印象に残った部分を抜粋しておきます。

社長を経験しても、たかだか1社の経験くらいでは「プロ経営者」と呼ばれるレベルには達して居ない。「経営者の謎解き37 経営技量の汎用化」に書いたように、松下幸之助のような天才を除き、1社の経験では経営技量の「汎用化」が足りないからだ。

 

私はそれを自覚してなんとかプロ経営者の領域に達したいと思い、リスクに挑み続け、経験を重ねてきた。経営者の技量は、過去に経験した「死の谷」の回数で決まる。

死の谷と呼ばれる修羅場経験の回数によって、いつか見た景色が増え、新たに直面した修羅場も乗り越えられるという話でした。

個人的にも「あの時よりは大変ではない」と思えることが心の平穏にも繋がり、冷静な判断を下せることに繋がるのではないかと考えています。

本書でもあったように、「あの人、人生後半は水平移動か、少々下り気味」みたいなことを言われないためにも、意図的に修羅場経験を増やし、「いつか見た景色」を増やしておくことが大切だなと思った次第でした。